奴隷

奴隷

天地顛倒は末法の姿である。「顛倒の衆生をして近しと雖も而も見ざらしむ」と説かれて有るが故に、真実の救済主たる宗教的教主を見失って、本来市場の交換手段に過ぎなかった貨幣を以て地上の神と崇め、却って金銭が人間を支配するかの如き顛倒現象を生じ、結局金融資本主義の段階に至って、個人も国家も世界も金銭に縛られて自由を失う。日本国が米国に追随せざる所以も、此の金融資本の束縛を被ったが為である。勤労者は機械の奴隷となり、資本家は利潤追求の奴隷となった。文明社会は総て奴隷となった。文明の甘き酒は、人間をして此の顛倒の酔狂を生ぜしめた、現代文明が正に毒発悶乱して大地に蜿転する時となった。此の解毒剤として教主釈尊が末法に留め置かれたる良薬が則ち南無妙法蓮華経の五字七字である。

法華経に曰く「是の好き良薬を今留めて在く、汝ら取って服すべし、差えじと憂うる事勿れ」。不殺生戎をも持たず、布施をも行ぜず、但南無妙法蓮華経と口に唱うる計りにて、いかでか我が身が仏とも成り、此の世界が浄土とも成る事が出来ようか。是は誰にでも当然起こる疑問である。此の疑問に対する解答は、但だ口に南無妙法蓮華経と唱うる事のみである。口に南無妙法蓮華経と唱えざる者には、耳に南無妙法蓮華経を聞かしむる事である。口を閉じて南無妙法蓮華経を唱えず、耳を塞いで南無妙法蓮華経を聞かざる者の為にも。大慈大悲懈倦(けげん)なく恒に南無妙法蓮華経を且つ唱え且つ聞かせねばならぬ。

     昭和三十一年八月 「原子力と人類の将来」

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