藤井日達上人
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悪人成仏

【 陣太鼓 】 昭和三年十月  毒鼓 向山の太鼓について
 そもそも出征の勇士を送る太鼓の音響は実は一面にこんな良民の憤慨を喚起せんがために撃ったものだ。信仰することができなければ、むしろ憤慨していただきたいものです。憤慨したということは、一良民生の胸の中に瞋恚、怨嫉の煩悩の炎を勝手に燃やさせたというまでのことではあるが、しかしこの瞋恚、怨嫉の煩悩の炎を酒色や金銭財宝を対鏡として起こさずして、諸経中王、悪人成仏の妙典たる、法華経の御題目の響きを対鏡として起こしたと云うことが、まことに有り難い動機である。当のご本人はただカンカン腹が立ったほかなんらの所得もなかったと思うているうちに、憤慨に煮え返った良民の八職心田の心の奥底には、既に逆縁済度の鋤がすき込まれ悪人成仏の佛種子が播かれてしまった。この上はなんぼ成仏なんかしたくないとおっしゃっても、それは成仏せぬわけにはどうしてもいかなくなった。こう見当を付けた時に一良民の憤慨の如きは、すなわちこれ入仏門の懺悔告白の異の手段であった。自称の一良民はまたこれ仏法の中の真の一良民である。煩悩即菩提とは、かくの如き救済の妙用を称するのだ。

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